会社で実施する健康診断の種類
会社で、従業員の健康診断を実施していると思います。
この費用って、会社が負担するのが義務なの?って思っている方はいらっしゃいませんか?
今回は、この健康診断実施の費用の負担と、賃金の支払いについて解説します。
その前に、会社で実施する健康診断にはいくつか種類があります。そちらから解説します。
会社に義務付けられている健康診断の種類には以下のようなものがあります。
<一般健康診断>
健康診断の種類 | 対象となる労働者 | 実施時期 |
雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者 | 雇入れの際 |
定期健康診断 | 常時使用する労働者(次項の特定業務従事者を除く) | 1年以内ごとに1回 |
特定業務従事者の健康診断 | 労働安全衛生規則第13条第1項第2号(※1)に 掲げる業務に常時従事する労働者 |
左記業務への配置替えの際、6月以内ごとに1回 |
海外派遣労働者の健康診断 | 海外に6ヶ月以上派遣する労働者 | 海外に6月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際 |
給食従業員の検便 | 事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 | 雇入れの際、配置替えの際 |
このほかにも、有害な業務に常時従事する労働者等に対し行う「特殊健康診断」があります。
特殊健康診断 | ・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機則第29条) ・鉛業務に常時従事する労働者 (鉛則第53条) ・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条) ・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限る) (特化則第39条) ・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条) ・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条) ・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条) ・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍 労働者 (石綿則第40条) |
じん肺検診 | ・常時粉じん作業に従事する労働者及び従事したことのある管理2又は管理3の労働者 (じん肺法第3条、第7~10条) 注:じん肺の所見があると診断された場合には、労働局に健診結果とエックス線写真を提出する必要があります。 |
歯科医師による検診 | (歯科医師による健康診断) ・塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者 (安衛則第48条) |
一般健康診断の中の、定期健康診断は実施している企業が多いようですが、「雇入時の健康診断」も義務であることを知らない企業がときどきあります。
「雇入時の健康診断」も定期健康診断と同じく企業の義務ですので、忘れず実施するようにしましょう。
対象者はどちらも「常時使用する労働者」となっています。
「常時使用する労働者」とは、正社員だけを指しているのではありません。パートタイマーやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上あるときは、パートやアルバイトであっても健康診断を実施する必要があります。
健康診断の費用の会社負担は義務なのか
健康診断の実施は、安全衛生法で事業主の義務とされているものです。義務とされている以上、会社が全額負担するのが当然とされています。
以下、安全衛生法より一部抜粋したものです。
(2) 第六六条関係
イ 第一項から第四項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。
労働安全衛生法および同法施行令の施行について(抜粋)
健康診断の受診時間は賃金の支払いは必要か?
では、健康診断を受診する時間については、こちらも実施が義務だから賃金に支払いも義務でしょうか?
こちらは、健康診断に種類によって取り扱いが変わります。
一般健康診断の場合
健康診断を受診することは従業員にとっても義務であり、正当な理由なく拒むことは出来ないこととなっています。
つまり、健康診断は労使双方にとっての責務となります。
また、一般健康診断の受診は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したもので、従業員の業種とは直接的には関係ありません。その為、必ずしも労働時間にしなければならないわけではなく、給与の支払い義務はありません。
ですから、労使で協議の上、定めるものとされています。
ただし、会社には健康診断実施義務があります。
従業員にきちんと受診してもらうためには、労働時間内に実施して、給与も支払うことが望ましいとされています。
とはいえ、創業間もない時は、会社の経営状況も厳しかったりします。そういった場合は、従業員ともよく話し合って、理解してもらうようにしましょう。
特殊健康診断の場合
こちらは、特定の有害な業務に従事する従業員について行なわれる健康診断であり、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものですから、所定労働時間内に行なわれるのを原則とされています。
労働時間内での実施ですから、賃金の支払いも必要です。
ですから、労働時間外に受診させる場合には、割増賃金の支払いも必要になります。
まとめ
従業員を雇用する側の義務として「安全配慮義務」というものがあります。
労働契約法 第5条
使用者は、労働契約に伴う、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
とあります。
健康診断は従業員の健康確保の基本となります。確実に実施するようにしましょう。