月額変更届とは
以前のブログ『給与計算の基礎をわかりやすく解説~社会保険料編~』で解説しましたが、ここでもう一度おさらいしたいと思います。
社会保険料は、社会保険の資格取得時の標準報酬月額で決定されます。
その後は、定時決定(算定基礎届)と随時改定(月額変更届)により変更になる場合があります。
日本年金機構のホームページに、それぞれ以下のように記載されています。
<定時決定>
健康保険および厚生年金保険の被保険者および70歳以上被用者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月~6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、厚生労働大臣は、この届出内容に基づき毎年1回、標準報酬月額を決定し直します。これを定時決定といいます。
引用:日本年金機構ホームページ
<随時改定>
被保険者の報酬が、昇(降)給等の固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいます。
引用:日本年金機構ホームページ
随時改定(月額変更届)は、固定的賃金に変動があって、標準報酬月額に2等級以上の変動があった場合に手続きをします。
では、この固定的な賃金に、上がったものもあれば、下がったものがある場合はどうなるのでしょうか?
固定的賃金の変動が複数あった場合
例えば、基本給20万円 役職手当3万円 通勤手当3万円 総支給額26万円のAさん。
給与の変動があって、基本給20万円 役職手当8万円 通勤手当 2万円 総支給額30万円になりました。(3ヶ月とも支払い基礎日数は17日以上です。)
26万円→30万円になりましたから2等級の変動です。
この場合、役職手当は上がりましたが、通勤手当は下がりました。
こんな時はどのように考えればいいの?って悩みますよね。
このように、複数の固定的賃金で、上がったものと下がったものがあったときは、
複数の固定的賃金を合計して上がっているかどうかを判断します。
役職手当3万円+通勤手当3万円=6万円
役職手当8万円+通勤手当2万円=8万円
となり、結果として手当は2万円アップしていますので、月額変更届の対象になります。
固定的賃金で、上がったものと、下がったものがあった場合は合計して判断することになります。
時給者の場合はどうなる?
まず、基本的な考え方として、月額変更届に該当するかどうかは、基本給や諸手当、そして残業代があれば、残業代も含めて2等級以上の差があるかどうかを判断します。
そして、そのあとこの2等級以上の変動は、固定的賃金の変動によるものなのかどうかを見ていきます。
ここで、さらにわかりづらくなるのか、時給者の場合です。
時給の場合も考え方は同じです。
継続した3か月間に支払われた報酬総額を3(か月)で除した額の標準報酬月額を従前と比べてみて、2等級以上の差が生じたときは、月額変更届の対象になります。
時給1,000円のBさんの場合で見てみましょう。(手当の支給はありません。3ヶ月とも支払い基礎日数は17日以上です。)
残業代も含めて、2等級以上の変動がありました。
この時に確認することは、時給が上がったかどうかです。
例えば、時給が、1,000円から1,010円にアップしていた場合は、固定的賃金が上がっていますので、随時改定の対象になります。
時給は1,000円のままで変わっていない場合(残業が多くて残業代が増えていた)は、固定的賃金に変動はありませんので、随時改定の対象にはなりません。
まとめ
月額変更届は、人事労務に長く携わっていても、悩むことが多い手続きです。
賃金の変動には、いろんなパターンがあるからです。
もし、どうしても判断がつかない場合は、顧問社会保険労務士がいる場合は社会保険労務士に相談したり、いない場合は年金事務所に相談するなどして曖昧な状態で手続きをすることがないようにしましょう。