有期契約社員だからって、期間満了で安易に雇止めできると思っていると危険です!

有期契約社員との雇用契約

従業員を雇うとき、期間を定めずに雇用する場合(一般的には正社員として雇用することが多いですね)と、雇用期間を定めて雇用する(いわゆる契約社員です)ことがありますね。

今回は、この契約社員を雇用したときの、「雇止め」について解説をします。

契約社員を雇用するときには、労働条件通知書(または労働契約書)を交付しますね。

その労働条件通知書には、更新の有無について明示しなければなりません。

具体的には、

(1)自動的に更新する (2)更新する場合があり得る (3)契約の更新はしない

といった記載をします。

この期間の定めがある雇用契約で、更新せず、雇用期間終了のタイミングで雇用を打ち切ることを「雇止め」といいます。

中には、何回も更新を続けていて、もう何年の同じ会社に勤務している、ってことありますね。

この時に、契約期間が満了にだから、といって雇用期間終了のタイミングで雇用を打ち切られたらどうでしょうか?

もし、あなたがその立場だったらどうでしょうか?

「えー!今まで更新してもらっていたから今年も同じように更新してもらって仕事ができると持っていたのに…」って思いませんか?

実は、そういった契約社員の不安定な状況がないように、契約社員の保護を図ってきました。

そのことを「雇止め法理」といいます。ちょっと難しそうな言葉ですね。

「雇止め法理」って何?

「雇止め」とは「有期労働契約者が合理的な理由なく契約更新を拒否されること」を指しています。

この雇止め法理はこれを違法とする考え方です。つまり、雇止めを法的に制限することです。

なぜ、「雇止め法理」と言われているかというと、「法理」は、「判例法理」を指しています。

判例法理とは、裁判所が示してきた判例の蓄積から形成された考え方を意味しています。

「雇止め法理」も、過去の判例(東芝柳町工場事件や日立メディコ事件などの最高裁判所判決)通して確立されていました。

しかし、平成25年4月の労働契約法改正により、この雇止め法理の内容が労働契約法第19条に条文化されました。ですから、今では法律に明文化されたルールとなっています。

労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

これはどういうことかというと、客観的な理由や、社会通念上相当と認められなければ、期間か満了になったからといって、雇止めは出来ませんよ、といった意味です。

では、どういう場合にこのルールが適用されるかというと、事例でご紹介します。

事例1:正社員と同じに見られていますケース

例えば、入社した時に、1年契約の雇用契約を結んでいたとします。

その更新を忘れていて、更新の手続きもせず、2年も3年もそのまま雇っていた場合は、実質的に見て、正社員と同じ状態と判断されます。

事例2:契約社員が契約の更新されることと期待するケース

契約社員のやっている仕事が臨時的な仕事ではなく、正社員と同じ仕事をしていて、もう何年も契約更新している(反復更新)と、契約社員からすると、今度の契約更新時もこれまでと同じように更新されると思う、つまり期待しちゃいますよね。

 

この2つの事例は、どちらも「雇止め法理」が適用されますので、

もし、契約を更新しない場合は、更新しないことについて合理的な理由が必要になり、単に契約期間が満了だからということで雇止めすることはできなくなります。

契約社員の更新手続きで気を付けることは?

では、何回更新すれば、何年契約社員として雇用されていれば、この「雇止め法理」が適用されるかというと、更新回数や雇用期間に関する明確な基準はありません。

これまでに、「雇止め法理」が適用されなかった裁判例では。以下の点を理由に、期間満了での雇止めを認めています。

・契約社員の業務が一時的な業務であったこと
・契約社員の賃金や勤務時間が正社員とは違っていたこと
・必ず契約期間満了前に新契約締結手続きをしていたこと

です。

判例では、必ずしも更新回数が重視されているわけではなく、契約更新時の契約書の作成状況や契約社員の仕事の内容など、会社の労務管理がきちんと行っていたかどうかが、雇止め法理が適用されるかどうかに影響しています。

もちろん、合理的な理由があれば、期間満了で雇止めをすることが出来ます。

お仕事をしている実態が正社員と同じ場合は、正社員を解雇するときの理由とほぼ同じような理由が必要になります。

正社員とは違う、一般的な契約社員の場合は、正社員と同じとみられる契約社員よりは、雇止めの理由は緩和されます。

雇止めの手続き

また、雇止めをするときの手続きについて一つ解説します。

以下に該当する場合に雇止めをする場合は、「雇止めの30日前に予告すること」が義務付けられています。正社員の解雇予告と似ていますね。

・1年を超えて雇用を継続している場合
・有期契約が3回以上更新されている場合

※ただし、あらかじめ更新しないことを契約社員に明示していた場合は、雇止めの予告義務については対象外です。

まとめ

今回は、契約社員を更新せずに雇用を終了する「雇止め」について解説しました。

契約社員で雇ったら、会社の都合でいつでも期間満了で雇止めすることが出来る、と思っている方が比較的多いように思います。

でも、実際はそうではなく、雇用管理がルーズで、きちんと更新の手続きを行っていなかったり、正社員と同じようにもう何年も仕事をさせていたりすると、安易に期間満了で雇止めすることが出来ません。

日本では、雇用をすると解雇や雇止めをするのはなかなか難しいのが現実です。

ですから、正社員であろうと、契約社員であろうと雇用管理はきちんと行う必要があります。

また、契約社員で雇用する場合は、なぜ契約社員なのか?正社員とは違うどんな仕事をしてもらうのか?などを検討し、仕事内容は正社員と同じなのに、契約社員の方がやめてもらいやすいといった安易な考えで雇用するのは控えましょう。