給与計算はソフトの利用が便利
給与計算には、手計算したり、エクセルを使って計算している企業がまだまだあります。
給与計算ソフトはやっぱり費用もかかるし…。
従業員数が10人もいなかったりと、毎月固定的な賃金の支給で、残業もなかったりすると、比較的手間もかからないので、こういった企業ではまだソフトがなくても時間をかけずに計算できるかもしれませんね。
でも、数時間でも残業が発生したりすると、その都度雇用保険料の計算とか、所得税の計算をしないといけないので、やっぱりちょっと面倒だし、間違いやすかったりします。
ですから、私も企業様には、費用的に無理がなければ、ソフトを使っての計算をお勧めします。
雇用保険料や所得税の自動計算の設定が出来ますで、支給総額が変動しても、システム化されていますので、いちいち計算する必要もなく楽ちんですね。
でも、便利だけど、システム会社や、メーカーに丸投げではちょっと危険です。
給与計算ソフトで設定されている中身はちゃんと理解しよう
割増賃金の計算を例に挙げて解説します。
割増賃金の計算にはルールが決まっています。
割増賃金を計算するときには、法定労働時間外労働、法定休日労働、深夜労働でそれぞれ割増率が決まっています。
その割増賃金を計算するもとになる、1時間当たりの賃金の計算が必要です。
ここを間違ってしまうと、正しい割増賃金が支給されず、割増賃金の未払いにつながる可能性があります。
割増賃金の1時間当たりの計算方法は
1時間当たりの賃金 = 月給÷1年間における1か月平均所定労働時間 |
となっています。
この1時間当たりの賃金に割増率を掛けて残業代を計算します。
ですから、この「月給」と「1年間における1ヶ月平均所定労働時間」を正確に計算することが重要なのです。
「月給」に含めるものと含めないもの
家族手当・扶養手当・子女教育手当
通勤手当
別居手当・単身赴任手当
住宅手当
臨時の手当(結婚手当、出産手当、大入り袋など)
※家族数、交通費・距離や家賃に比例して支給するもの。一律支給の場合は月給に含めます
引用:厚生労働省「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」のリーフレットより
上記に書かれているものは、「月給」含めなくてもOKです。
でも!ここで注意が必要です。赤文字の部分です。
「※家族数、交通費・距離や家賃に比例して支給するもの。一律支給の場合は月給に含めます」
例えば、家族手当を、子どもの一人につき5000円支給となっていれば、子どもの人数に応じて家族手当は変動しますね。一律支給ではないですね。⇒だから「月給」から除いてOKです。
でも、一人でも、二人でも子どもがいれば一律10,000円支給しているとすれば、一律支給になりますね⇒割増賃金の計算に含めます。
通勤手当も、距離に応じて支給するようになっていれば、距離に応じて通勤手当は変動しますね。⇒だから「月給」から除いてOKです。
でも、距離に関係なく一律10,000円支給していれば、⇒これは一律支給なので「月給」に含めて割増賃金の計算をします。
もし、あなたの会社が、家族手当や通勤手当を一律支給していた場合、
この設定をする業者の人が、家族手当や通勤手当は除外してOK、だけの知識を持って計算の設定をしていれば、どうなるでしょうか?
割増賃金は間違った金額、ということになります。
1ヶ月平均所定労働時間の計算
1年間における1か月平均所定労働時間の計算
(1年間の所定出勤日数×1日の所定労働時間)÷12=1か月平均所定労働時間
引用:厚生労働省「しっかりマスター 労働基準法 割増賃金編」のリーフレットより
以下に事例をもとに計算してみましょう。
【年間所定休日122日、1日の所定労働時間8時間、暦日365日 の場合】
365日-122日=243日 ←1年間の所定出勤日数です。 (243日×8時間)÷12 = 162時間 ←1か月平均所定労働時間 |
となります。
ですから、閏年だったり、年間の所定休日が変われば、この所定労働時間も変わり、1か月平均所定労働時間も変わります。
ここもちゃんと計算してシステムに設定することが必要です。
毎年計算して、1か月平均所定労働時間が変われば、設定も毎年変えなければなりません。
まとめ
給与計算は、実はいろんなルールがあります。
労働基準法等にて定められたルールや、そして就業規則に定めらルールをしっかりと把握し理解しておくことが必要です。
欠勤や、遅刻・早退をした時の控除の仕方は法律では決まっていません。この計算方法は、企業でそれぞれ決めて構いません。
ただ、就業規則にちゃんと定めて、その通りに計算しなければいけません。
また、年次有給休暇を取得した時の計算方法もルールがあります。
給与計算ソフトには、設定しなければいけない項目がたくさんあります。
正直、とても面倒です。ですから、業者さんに設定を依頼する企業が多いです。
依頼してもいいのですが、一つ一つの計算方法や計算根拠を理解して、自社のルールにちゃんとあっているかをしっかりチェックしましょう。
給与計算は、間違わずに計算して当たり前の正解です。間違えていなかったからと言っても感謝されるわけではありませんが、間違えると従業員から不満が出来ます。
支給漏れがあると、従業員に迷惑がかかるし、社会保険料の控除漏れがあると、さかのぼって従業員から徴収するとなると従業員も負担になります。
従業員との信頼関係にも影響しますね。
また、給与の過払いをしていると、会社に無駄なコストをかけてしまいます。
給与計算はいろいろと神経を使いますが、最初にしっかりと設定し、保険料率の改定時期や年度末や年度初めなど要所要所でちゃんとメンテナンスをしておけば、手計算やエクセル計算よりは、やはり効率的です。
ポイントをしっかり押さえて、IT化を有効活用しましょう!