経営者なら知っておきたい、よくわかる就業規則の解説

就業規則にはどんなことを記載するのか、絶対作らないといけないのか、いろいろ疑問がありますね。

今回は、就業規則の作り方、作ったあとのことなどをわかりやすく解説します。

 

就業規則の作成が必要な会社とは?

就業規則は、従業員の就業に関することを記載するものです。

従業員がいなければ就業規則の作成は必要ありませんね。

では、従業員を一人でも雇ったら作成しないといけないのでしょうか?

いいえ。作成しなくても問題ありません。(もちろん、作成しても構いませんよ。)

厚生労働省のホームページには、以下のように書かれています。

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

引用:厚生労働省ホームページ

つまり、常時10人以上になったら作成が必要になります。

常時10人以上とは?

「常時」10人以上って書いてありますね。

常時とはどういうことでしょうか?

常に(いつも)10人以上の従業員がいる、ということです。

また、この10人に含まれるのは、正社員だけではありません。

パートもアルバイトや契約社員などの非正規雇用の従業員も含まれます。

パート社員の勤務時間が1日1時間や2時間でも、含まれます。

ですが、こんな場合はどうなるでしょうか?

  • <飲食店経営>
  • 正社員 5名
  • パート 3名
  • アルバイト 3名 ※アルバイトは年末年始の繁忙で1ヶ月の期間限定で雇った。
  • 合計 11名

合計11人になったので、就業規則の作成義務はあるでしょうか?

答えは「ノー」です。

理由は、アルバイトは期間限定での雇用なので、一時的な雇用です。

このように、一時的に10人を超えるような場合は、「常時」10人以上には該当しませんので、作成義務はありません。

逆に「常時」10人以上いたけど、退職者が出て、一時的に10人未満になっても、10人以上に当てはまりますのでご注意ください。

支店など複数の事業場があったら?

支店や出張所など、複数の事業場があるときは、その事業場毎常時10人以上かどうかで判断となります。

本社だけ、ではないのでこの点も注意が必要です。

就業規則には何を書く?

では、いよいよ就業規則の作成についてみていきましょう。

就業規則に記載する内容には

  • 絶対的必要記載事項
  • 相対的必要記載事項
  • 任意的記載事項

というものがあります。では、それぞれ見ていきましょう。

「絶対的必要記載事項」とは?

文字通り、必ず記載しなければならない事項です。

  • 始業及び終業の時刻
  • 休憩時間
  • 休日
  • 休暇
  • 交替制の場合には就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定、計算及び支払の方法
  • 賃金の締切り及び支払の時期
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

以上については、就業規則に必ず記載します。

始業・終業の時刻や休憩時間、給与の締め切り日、支給する日、昇給の時期、定年退職の年齢、などです。

「相対的必要記載事項」とは

定めをする場合は記載する事項です。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  • 食費、作業用品などの負担に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • その他全労働者に適用される事項

例えば、

退職金を支給するんだったら、退職金を支給する対象者や、退職金の支給基準などを就業規則で定める必要があります。

退職金を支給しないんだったら、就業規則に退職金に関する記載は必要はありません。

賞与を支給するんだったら、賞与の支給基準や、支給する時期などを記載します。

任意的記載事項とは

法律では、特に決まってはいないが、最近の働き方の多様化や、トラブルを防ぐために、従業員が働きやすくするようなこととか、会社が自由に記載する項目になります。

これからは、こちらが重要になるかもしれませんね。

こちらについては、最後の章で解説します。

就業規則を作成したら?

労働基準監督署への届出

常時10人以上の事業場で就業規則を作成したら、管轄の労働基準監督署に届出をします。

常時10人未満で就業規則を作成した場合は、届け出義務はありません。

届出時に準備するもの

  • 就業規則(変更)届の用紙
  • 意見書
  • 就業規則本体(賃金規程など別規定があれば、そちらも添付します。)

それぞれ、2部作成します。

一部は労働基準監督署へ提出します。

もう一部は、会社の分として労働基準監督署の受付印を押印してもらいましょう。

意見書とは

届出書にある、意見書について説明します。

就業規則を作成したら、監督署に届出をする前に、従業員代表の意見を聴かないといけません。

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。(労働基準法 第90条第1項)

つまり、従業員代表の意見を聴くことは義務です。

この「意見を聴く」とは、従業員の同意が必要、ということではありません。

意見を聴いて、その意見の内容を書いた意見書を添付することが必要です。

ですから、法に触れる内容は別ですが、仮に意見書に従業員代表が「就業規則の内容には反対です」といったような記載があっても、就業規則の効力自体には影響しません。

従業員への周知

就業規則を作成して労働基準監督署に届出をして、「あー完成した!」ってほっとしていませんか?

大事なことは、就業規則を従業員にきちんと周知することです。

大事なものだから、とか、あまり色々知られたくないから、とかで、従業員が見れないところに、鍵のかかる書棚に保管したりしていませんか?

それは、NGです。

就業規則は、各作業場の見やすい場所への掲示、備付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければなりません。(労働基準法第106条)

会社には就業規則の「周知義務」があります。これは義務です。しっかり覚えておきましょう。

では、どのようにして周知するのでしょうか?

 (1)常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける。

 (2)書面で労働者に交付する。

 (3)電子的データとして記録し、かつ、各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できるパソコンなどの機器を設置する。

となっています。

いずれかの方法で、従業員がいつでも見れるようにしておきましょう。

では、周知していないとどんなことが起きるのでしょうか…。

従業員の勤務態度が悪く、何度も教育するけど改善しない、懲戒解雇にしたいと思ったとします。

しかし、就業規則を従業員へ周知しておらず、従業員が解雇事由を知らなかったら、解雇は無効になるかもしれません。

あなたが車を運転して、60キロ出してスピード違反をして捕まったとします。

その時に、60キロ以上のスピードを出したら違反ということが周知されておらず知らなかった、としたら、このスピード違反に納得しますか?納得しませんよね。ちゃんと言っておいてくれないと、ってことになりますね。

それと同じです。

また、年次有給休暇はパートさんにも付与されます。

それを知られたくない、知られて有給をしょっちゅう取られたら困る。

でも、あなたの会社がそれを伝えていなくても、友人がパートで働いていて、そこではしっかりと有給が付いていて、しっかり有給を取っていたとします。

そうすると、あなたの会社の従業員はどう思うのでしょうか?不満に思うのではないでしょうか?

これからの就業規則の役割

さて、最後にこれからの時代に必要な就業規則のあり方について解説したいと思います。

就業規則は、最初に書いたように必ず記載しないといけないことや、会社で決めるのなら記載しないといけないことなど従業員が会社で働くためのルールを記載します。

でないと、事業運営がうまくいきませんよね。

でも、これからの会社は、ただ働くためのルールを決めればそれでいいのでしょうか?

家族の生活を支えるため、よくいう「ライスワーク」食べていくために働く人ももちろんいるでしょう。

ですが、物があふれているこの時代、食べていくためだけに働く人だけではなくなってきました。

人の働く理由は多様化しています。

やりがいを求めて仕事をする、社会貢献のため働く、など働く目的は様々です。

従業員がやりがいを持って働くには、就業規則を作成するために必要な最低限の事柄だけを書くのではな

く、会社のビジョンやミッション会社は何を大切にしているのか、といったことの記載が大事になってくるのではないでしょうか?

従業員のやる気を出す就業規則

従業員を大事にする就業規則

をこれからはこんな目指しませんか?