従業員が50人以上になったらやること解説「衛生管理者」「産業医」編

前に「経営者なら知っておきたい就業規則の解説」で常時雇用する従業員が10人以上になったら就業規則の作成と・届出義務があることを書きました。

さらに従業員が増えて50人以上になったらやらなければいけないことがあります。

これは主に、従業員の安全と健康の守るためのもので「労働安全衛生法」に定められています。

今回は、従業員数が50人以上になったらやることを解説します。

従業員が50人以上になったら会社に義務づけられていること「衛生管理者の選任」「産業医の選任」

では、まず、従業員数が常時50人以上とは、どういう状態でしょうか。

「常時雇用される労働者 50 人以上」には、繁忙期や閑散期ではない常態時で、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パートなど、雇用形態・所定労働時間の長短にかかわらず、事業場で働いている人すべてが含まれます。(昭和47年9月18日 基発第602号 通達)

これは、常時10人以上の時の考え方と同じですね。

では、どんなことをやるのでしょうか。

  1. 衛生管理者の選任
  2. 産業医の選任
  3. 衛生委員会の設置
  4. ストレスチェックの実施と報告
  5. 定期健康診断の結果報告

以上の5つがあります。

今回はこのうちの、「衛生管理者の選任」と「産業医の選任」見について解説します。

衛生管理者の選任

衛生管理者の職務

衛生管理者とはどんなことをするのでしょうか?

衛生管理者は、
(1)労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
(2)労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
(3)健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
(4)労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
等のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。

引用:厚生労働省ホームページより

衛生管理者は、毎週1回作業場の巡視も行わなければなりません。

衛生管理者の業種に応じた資格

業種によって必要な資格が違っています。

  1. 【業種】農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業
  2. 【資格】第一種衛生管理者免許若しくは衛生工学衛生管理者免許又は医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、厚生労働大臣の定める者
  1. 【業種】その他の業種
  2. 【資格】第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者

上段にある、農林畜水産業や鉱業、建設業といった業種は第一種の資格が必要ですが、冗談以外の業種については第二種の資格でOKです。

もちろん、第一種でもOKです。

衛生管理者の選任数

事業場の労働者数で必要な人数が決まっています。

50人以上~200人以下 1人以上
200人超~500人以下 2人以上
500人超~1,000人以下 3人以上
1,000人超~2,000人以下 4人以上
2,000人超~3,000人以下 5人以上
3,000人超 6人以上

※なお、建設業、運送業、製造業等の場合は、安全管理者も必要になります。

産業医の選任

産業医の職務

産業医は、以下のような職務を行うこととされています。

(1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。
(2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
(3)労働衛生教育に関すること。
(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

産業医の要件は?

産業医は以下の要件を満たしている医師となります。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

医師であれば誰でも産業医になれるというわけではありません。

ですから、産業医の先生は、現在担当している企業で手一杯ということもあり得ますので、50人以上になりそうな場合は、早めに産業医の先生を探しておきましょう。

産業医の選任数

衛生管理者と同様に、産業医も従業員数に応じて選任数が変わります。

(1)労働者数 50 人以上 3,000 人以下の規模の事業場 ・・・ 1名以上選任
(2)労働者数 3,001 人以上の規模の事業場 ・・・ 2名以上選任

また、常時 1,000 人以上の労働者を使用する事業場と、労働安全衛生規則第 13 条第 1 項第 2 号に定められている業務に常時 500人以上の労働者を従事させる事業場では、その事業場に専属の産業医の選任が必要になります。

「衛生管理者」と「産業医」の選任はいつまでに?

選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任して、遅滞なく様式第3号「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」という報告書を所轄労働基準監督署に提出することとなっています。

衛生管理者も資格が必要ですし、産業医も資格が必要です。

従業員数が50名近くになったら、早めに対応するようにしましょう。