職場に潜む“無意識の思い込み”──アンコンシャス・バイアスとは?具体例と対策を解説

はじめに:職場にひそむ“思いやり”の落とし穴

「女性だから育児で忙しいと思って仕事を任せなかった」
「若いから経験不足だろうと判断して昇進の機会を与えなかった」

こうした“思いやり”のつもりが、実は無意識の偏見=アンコンシャス・バイアスであることがあります。

アンコンシャス・バイアスとは、
自分自身が気づかずに持っている物事の捉え方の偏りや思い込みを指します。
近年では、職場での評価・昇進・採用・育成・コミュニケーションなどに大きな影響を及ぼす要因として注目されています。

この記事では、職場におけるアンコンシャス・バイアスの事例や影響、その気づき方や対策などわかりやすく解説します。

アンコンシャス・バイアスー職場に影響する無意識の思い込み

アンコンシャス・バイアスとは、自分では気づかないうちに持っている「物事の捉え方の偏りや思い込み」のことです。

このバイアスは、過去の経験や育った環境、メディアからの影響などをもとに無意識に形成されるもので、誰にでも起こりうるものです。良かれと思った配慮や常識のつもりの言動が、実は“偏見”として他者に伝わってしまうケースも多く存在します。

人は皆、それぞれ異なる価値観や経験をもっており、無意識のうちに「自分の当たり前」を基準にして、相手を判断してしまうことがあります。これ自体は人間の認知の仕組みとして自然なことですが、その“思い込み”がときに相手に誤ったメッセージを与えたり、チャンスを奪ったりしてしまうことがあるのです。

日常の中にもあるアンコンシャス・バイアスの例

  • 男性に「単身赴任、大変ですね」と声をかけたら、実は妻が単身赴任中だった
  • 男性の手作り弁当を見て「奥さんが作ったんですね」と言ったら、本人の手作りだった

こうした何気ない言葉の背景には、「育児や料理は女性が担うもの」という思い込みが潜んでいる場合があります。本人に悪気がなかったとしても、相手に違和感や疎外感を与えてしまうこともあるのです。

アンコンシャス・バイアスが職場に与える影響

アンコンシャス・バイアスは、職場の評価やコミュニケーション、働き方にさまざまな影響を与えます。

  • 公平な評価がされない
    印象で判断され、実績や実力が正当に評価されないケースがあります。
  • 意欲的な人が活躍できない
    「この人にはまだ早い」「リーダー向きではない」といった思い込みで、成長や挑戦の機会が奪われることも。
  • 離職リスクが高まる
    見えない壁や違和感が蓄積し、居心地の悪さが離職の引き金となることもあります。
  • 多様性が活かされない
    組織に多様な人材がいても、その能力や視点が活かされず、組織全体の力が伸び悩むことに。

つまり、アンコンシャス・バイアスは、組織全体の活力や人材定着、生産性にまで影響を及ぼす可能性があるのです。

まとめ:小さな気づきが、職場を変える

アンコンシャス・バイアスを完全に取り除くことはできません。しかし、

「自分にも思い込みがあるかもしれない」と気づくだけでも、日々の言動が変わっていきます。

たとえば──

  • 「子育て中だから忙しいだろう」と決めつけず、本人の希望を直接確認してみる
  • 会議で、いつも同じ人に意見を求めがちなら、他のメンバーにも声をかけてみる
  • 昇進やリーダーの適性を、印象ではなく事実や意欲から見直してみる

アンコンシャス・バイアスの問題は、決して“特別な人”だけが抱えるものではありません。誰しもが持ちうる「思い込み」だからこそ、それに気づき、向き合う姿勢が求められています。

制度や仕組みを整えることと同じくらい、日々の言動や関わり方を見直すことが、より良い職場づくりには欠かせません。

小さな気づきや見直しの積み重ねが、働きやすく、活躍できる職場づくりにつながります。
ぜひ、今日からできる一歩を踏み出してみてください。

厚生労働省の研修動画を活用してみませんか?

厚生労働省では、アンコンシャス・バイアスに関する理解を深めるための「研修動画」を公開しています。経営層向け、管理職向け、人事労務担当者向けの3タイプに分かれており、目的や立場に応じた活用が可能です。

ぜひ、社内で共有・視聴し、職場内での対話や取り組みの第一歩としてご活用ください。

▼研修動画はこちら(厚生労働省サイト)
アンコンシャス・バイアス研修動画(人事労務担当者向け)
アンコンシャス・バイアス研修動画(経営幹部向け)
アンコンシャス・バイアス研修動画(管理者向け)

※本記事は、厚生労働省が公開している「アンコンシャス・バイアス研修動画」等を参考に、当事務所にて構成・編集したものです。


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