やる気のない部下は本当にやる気がないのか!?
管理職やマネージャーになると数人あるいは数十人の部下を持つことになります。そうすると、めっちゃやる気があって積極的に仕事に取り組む人と、言われたことしかやらない、何かにつけ不満ばかり言う、などいろんな部下がいます。
どうしたらやる気の無い社員のやる気を上げることが出来るのだろうか?とお悩みの上司の方は少なくないと思います。
例えば、こんな経験ありませんか?
ちょっと自分の部署ではどうにも結果を出せない…と思って部署異動したら、めちゃくちゃやる気を出してパフォーマンスが上がっている社員。
そもそも、「やる気がない」というのは何基準でしょうか?よくよく考えると、自分の考えつまり上司である自分の考えに合うか合わないかで判断していませんか?
一見やる気の無いように見える人でも、内なる熱い思いを持っている人もいるかもしれません。ただ、表現の仕方の違いでそう見えているだけかもしれません。
上司であるあなたとの仕事観、価値観が違うだけ…かもしれません。
14の労働価値とは
「14の労働価値」とは、アメリカのキャリア研究者であり心理学者であるドナルド・E・スーパー氏が提唱したキャリア理論で「仕事において、個人が重要性、必要性があると感じる価値観」として提唱したものです。
仕事に対する価値観を14項目に特定しました。
- 能力の活用―自分の能力を発揮できること
- 達成―良い結果が生まれたという実感
- 美的追求―美しいものを創りだせること
- 愛他性―人の役に立てること
- 自律性―自律できること
- 創造性―新しいものや考え方を創りだせること
- 経済的価値―たくさんのお金を稼ぎ、高水準の生活を送れること
- ライフスタイル―自分の望むペース、生活ができること
- 身体的活動―身体を動かす機会が持てること
- 社会的評価―社会に仕事の成果を認めてもらえること
- 危険性、冒険性―わくわくするような体験ができること
- 社会的交流性―いろいろな人と接点を持ちながら仕事ができること
- 多様性―多様な活動ができること
- 環境―仕事環境が心地よいこと
この中のいくつかの価値観が組み合わさって、仕事への価値観が生まれてくるとスーパーは言っています。
この14の労働価値を見て見ると、どれにもそれぞれの良さや強みといったものがあります。
もし、上司のあなたの価値観が①と②だったとします。自分の能力を発揮できて、良い結果が生まれる、という労働の価値観を持っているとします。
しかし、部下の社員は⑫と⑭で、いろんな人と接点を持ちながら仕事ができ、仕事環境が心地よいことに労働価値感を持っていたらどうでしょう。おそらく上司の側からするとなんだか物足りない、もっとやる気出して仕事をしてもらいたい、と思うかもしれません。でも部下の側からすると、決して仕事に対してやる気がないわけではないのです。ただ、上司と部下とで「労働」に対する価値観が違うだけなんですよね。
こういった部下の労働価値感を知らずにいると、その良さや強みを活かすことが出来ず、部下もやりがいを感じないかもしれません。
どれが良いとか悪いとかではなく、労働の価値観が「違う」ということを理解することが大切です。
労働の価値観が違うことを上司が理解すること、そしてその違いを組織内で共有しることが大切です。
その違いをお互いが理解し、その違いを上手く生かしていく能力が上司やリーダーには求められるでしょう。
できることを増やしていく
では、その違いを上手く活かしていくにはどうすればいいでしょうか?
その価値観も大切ですが、自分の価値観とは違っても、いろんなことを経験することで、その人の可能性の幅はもっと広がるのでっは無いかと思うのです。
価値観に合った仕事だけやっていては、新しい発見や成長を妨げてしまうことだってあり得るかもしれません。
子どものころ、ニンジン嫌い、ピーマン嫌い、という子どもに対し、好きなものだけ食べさせるでは栄養に偏りが出て、体の成長に影響があるかもしれないと、親はどうにかして嫌いなため物を上手く調理して食べてくれるようにに工夫します。
上司やリーダーもこの親と同じような役割が必要です。
この仕事はやりたくない、と思っていたとしても、上司からするとこれは今やっておいた方がよかったりするわけです。そんなときは先ほどのニンジンやピーマンが嫌いな親と同じように、やる目的、今取り組んだほうがいい理由などの伝え方を工夫してどうにかやってもらうのです。
そうすることで、最初はいやいやだったことでも、やっているうちに出来ることが増えていって、結果「やりたいこと」に繋がったりします。
本人がやりたいことだけをやらせるのではなく、やりたくなかった仕事でもやっているうちに、「CAN」できることが広がり、成長や達成感、自信となり、仕事へのやりがいに持てるようになります。
ストーリーを語れ
今、BSで連続テレビ小説「あさが来た」の再放送がされています。大同生命創業者の一人であり、現在の日本女子大学の設立にもかかわった実業家広岡浅子さんをモデルに描かれたドラマです。
ちょどこのブログを書いているころは、炭鉱ビジネスに進出したころで、女性ということでなかなか働こうとしない炭鉱夫たちに対し、主人公のあささんはこのようなことを言います。
皆さんが掘っている石炭は、蒸気機関車を動かすためのもので、その蒸気機関車は人や物を運び、それにより日本の経済は発展する。皆さんのやっている仕事は日本の経済を支えていると。
その、話しに炭鉱夫たちは感動し、それ以降やる気を持って石炭堀りに取り組みます。
これはつまりセンスメイキングです。
センスメイキングを生み出した中心人物はアメリカの組織心理学者カール・ワイク氏です。
センスメイキング自体はまだ発展中のため、定義自体も多様なところがありますが、『世界標準の経営理論』の著者入山章栄教授がこの著書の中で、センスメイキングとは「納得」であり「腹落ち」であると仰っています。
先ほどの炭鉱夫の話しに戻れば、単に石炭を掘る、ではなく、自分たちの掘った石炭で蒸気機関車が動き、それは引いては日本の経済を支えていると思って石炭を掘るのでは「石炭を掘る」ということの「意味づけ」が全く異なります。
このように、自分たちの仕事はどんな意味があるのか、ということを伝えることはとても大切ではないでしょうか。
まとめ
仕事に対する価値観はそれぞれです。何が良くて何が悪い、どちらが上でどちらが下ということもありません。
とにかく「違う」ということを上司やリーダーは知っておくことが大切です。
仕事に対する価値観が自分と違うから「あの人はダメだ」と決めつけるのは、少々もったいない気がします。
また、まとめでお伝えしたいことは、このようなやる気を起こしてもらうためには、とにかく上司と部下との関係性が大切です。
それには、適切なフィードバックが必要です。それは、ポジティブなフィードバックの時もあれば、ネガティブなフィードバックの時もあるでしょう。
しかし、日ごろからそうやって「ちゃんと見ている」「ちゃんと見てくれている」といった些細なことから関係性は良好なものになっていきます。
日ごろあまり社員のことを見てもいないのに、1on1ミーティングの時に「なんでも話していいよ」とか「最近、どう?」といったような何とも抽象的な言葉かけをしても、それは部下は話してくれません。
日ごろから関係性を作る努力をして、「関係の質」を高めることは組織のリーダたる上司の重要な仕事のように思います。