フレックスタイム制を採用する上で知っておきたいこと

フレックスタイム制ってどんな制度?

コロナ禍で急速にテレワークが普及しましたね。

法律もあまり整備されていない中で普及したので、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、テレワーク導入に際しての留意点や、労務管理上の留意点は示されてはいるものの、「労使で十分に話し合って」といった記載が目につきます。

テレワークとは、

在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務を総称したものなので、必ずしも在宅勤務だけを指すものではありませんが、やはり自宅における在宅勤務が割合的には多いと思います。

在宅勤務の場合、時間管理が難しく、中抜けと休憩時間の区別、ちょっとした子どもの世話や、宅配場届いた時の対応など、細かく上げるとなかなか大変です。

そこで、在宅勤務と相性のいい働き方の一つとしてフレックスタイム制があります。

先ほどのガイドラインにも記載されていますが、様々な労働時間制度を活用して、労働時間の柔軟な取り扱いの一つとして「フレックスタイム制」についても記載があります。

フレックスタイム制

一定期間についてあらかじめ決められた総労働時間の範囲内で、始業や終業の時間を労働者が自由に決められる制度です。

例えば、1ヶ月の総労働時間を160時間としている場合、この160時間の範囲内で、従業員が好きに仕事の始業時刻、終業時刻を決めてよいことになります。

ある日は、10時から18時、ある日は8時から17時、ある日は14時から20時といった具合です。(休憩時間は、労働した時間に応じて取得が必要です。)

従業員自身で始業や終業の時刻を決めることが出来るので、仕事と生活のバランスも上手く図れるかもしれませんね。

フレックスタイム制を導入するため整備すること

では、このフレックスタイム制を導入するにあたり、知っておきたいことを解説します。

労使協定の締結

まず、やらなければいけないことは

1就業規則等への規定・・・就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定めます。
2労使協定で所定の事項を定めること・・・労使協定で制度の基本的枠組みを定めます。

では、労使協定で定めることはというと

①対象となる労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④標準となる1⽇の労働時間
⑤コアタイム(※任意)
⑥フレキシブルタイム(※任意)

⑤コアタイム、⑥フレキシブルタイムは任意です。

⑤コアタイムとは?・・・コアタイムは、1⽇のうちで必ず働かなければならない時間帯です。

従業員全員が集まる時間帯があったほうがミーティングも開催でき、情報共有の時間が必要、といったように業務の性質上必要な場合は設けましょう。

フレックスタイム制は、始業・就業の時刻を会社側から指定することは出来ませんので、このコアタイムの設定についてはよく考えて設定しましょう。

⑥フレキシブルタイムとは?・・・フレキシブルタイムは、自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯のことです。

例えば、フレキシブルタイムを8時間~22時と定めたとします。

そうすると、この8時間~22時の間で始業・終業時刻を決めて勤務することになります。

この、フレキシブルタイムも任意ですので、設けないことも可能です。そうなれば、0時~24時どの時間帯でも仕事をしてよいことになります。

フレックスタイム制は始業・始業時刻を自由に決めるものですから、深夜勤務の割増は適用されます。

ですから。もし毎日22時~翌5時までの勤務をする従業員がいれば、その労働時間に対し2割5分以上の割増賃金の支払いが必要になりますので注意が必要です。

この労使協定は、清算期間が1ヶ月の場合は届け出は必要ありません。

清算期間が1ヶ月を超える場合は、労働基準監督署への届け出が必要です。

残業代の計算方法は?

フレックスタイム制を導入した場合の残業代の計算は、清算期間を単位として時間外労働を判断することになります。

従業員が始業終業の時刻を決めますので、1日単位で、判断はしません。

例)3月の場合

総労働時間:160時間

実際の労働時間:168時間

法定労働時間を超えているかについては、1ヶ月単位の場合は、下記のようになっています。

31日の月:177.1時間

30日の月:171.4時間

29日の月:165.7時間

28日の月:160.0時間

実際の総労働時間がこの時間を超えた分については、割増賃金の支払いが必要です。

今回の例の場合は、3月ですから、法定労働時間の177.1時間を超えていませんから、1.0倍の賃金の支払いが必要になります。

この法定労働時間を超える場合があるときは、事前に36協定届の届け出が必要です。

なお、フレックスタイム制を導入する前から、36協定届を提出しても、フレックスタイム制は記載内容が異なりますので、改めて協定を結んで、労働基準監督署への届出が必要です。

フレックスタイム制においては、先ほど解説したように、清算期間を単位として時間外労働を判断することになるので、36協定において「1⽇」の延⻑時間について協定する必要はなく、「1か⽉」「1年」の延⻑時間を協定します。

休日についてはどうなる?

フレックスタイム制は、始業終業の時刻を従業員が自由に決めていい、という制度であって、休日についてはフレックスタイム制を導入する前と変わりません。

土日が休日となっていた場合は、土日が休日であることには変わりありません。

仕事をする時間が自由になったことで、休日も自由に決めることが出来る、と勘違いしてしまいがちです。

土日の休日に仕事をする必要があるときは、事前に承認を受けるなど、運用をきちんと行いましょう。

まとめ

フレックスタイム制は、テレワークを導入する際だけでなく、求人をする際の働き方のメリットとして、アピールポイントにしている企業もあります。

ですが、メリットがある反面、勤務時間を自由に決めることが出来ることから、従業員本人が総労働時間内でどのように勤務していくか時間管理が必要にもなります。

導入するにあたっては、事前にきちんと運用シミュレーションや制度の仕組みを理解したうえで、導入するようにしましょう。

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