みなし残業手当ってどんな手当?
みなし残業手当とは、
実際の残業時間にかかわらず、一定時間分の残業代として、毎月定額で残業手当を支払う制度のことです。
例えば「月30時間分の残業を含む」などと雇用契約書に記載されている場合には、月30時間までの残業代を残業手当として支給しているので、30時間分までは、残業しても別途に残業代は支給されません。
企業によっては、「みなし残業手当」、「固定残業手当」、「職務手当」と名称は様々です。
良くお聞きするのが
みなし残業手当は、あくまで30時間分を支給している場合、30時間分を超えたらその超えた分の残業代は支払わないといけません。
だから、みなし残業手当を支払っているからって、残業時間の把握をしていないのは間違いです。
みなし残業手当を支給するときの注意ポイント2つ
では、みなし残業手当を支給している場合に注意することを解説します。
何時間分の残業代かを明記する
基本給にあたる部分の金額と、みなし残業手当にあたる部分の金額が明確に区別できるように、また、みなし残業手当が何時間分の残業代にあたるのかわかるように、就業規則や雇用契約書等に記載する必要があります。
労働条件通知書や雇用契約書に記載する場合を例に解説します。
<悪い例>
①基本給25万円(みなし残業時間手当30時間含む) ②基本給25万円(一律残業手当含む) |
これでは、残業代がいくらなのか、何時間分なのかがわからないからです。
例えば、①の場合、
基本給25万円(30時間分のみなし残業代4万円を含む)
と記載します。
ですが、「みなし残業代4万円を含む」では、従業員にわかりづらく、給与明細に「基本給 250,000円」と記載されれば、残業代として一部支給されていることに認識がない場合もあります。
<良い例>
基本給 21万円 みなし残業手当 4万円(30時間相当分を含む) |
といったように、明確に分けて記載したほうがいいでしょう。
みなし残業時間について注意ポイント!
このみなし残業手当を何時間分にするのかは、どれくらいになりそうなのかを勘案して企業ごとに決定して構いません。
みなし残業手当の上限は定められていません。
ですが、目安は45時間を超えないことです。45時間以内にしましょう。
理由は、働き方改革関連法で時間外労働の上限(1ヶ月45時間)が罰則付きで制限が設けられるようになったからです。
45時間を超えたからといって直ちに違法になるというものではありませんし、特別条項付きの36協定を結んで届出をすれば、1年に6回までは認められるものではあります。(36協定届を結ばず、時間外労働をさせることは違法になりますので、この点もご注意下さい。)
ですが、45時間を超えるみなし残業手当を支給していると、こんなに残業がある会社なのか、という印象を持たれますし、従業員にとってはマイナスな印象を持つと思います。
昨今長時間労働が問題になっていますので、できるだけ時間外労働は減らし、効率的で生産性が向上する取り組みを検討されることをお勧めします。
残業代の給与計算方法
では、給与計算時には実際にどのように計算するのかを解説します。
みなし残業手当は、先ほどの例のように、30時間分として4万円を毎月定額で支給しています。
仮に、25時間しか残業がなかった場合でも、4万円は支給することになります。
ですが、ある月に35時間残業をした場合は、30時間を超えた5時間分は時間外手当として支給することになります。
その為、みなし残業手当を支給していても残業時間の管理は必要になってくるわけです。
注意ポイント!
手当を先に定額で〇万円と決めている場合、割増賃金の基礎となる賃金を計算し、割増賃金が何時間相当分になるのかを正確に計算しておきましょう。
ここが正確に行われていないと、未払い残業代に繋がる恐れがあります。
昇給したような場合は、再計算をして、きちんと管理するようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
みなし残業手当の明記の仕方や、計算方法などご理解いただけたでしょうか?
みなし残業手当を支給している企業で、採用の求人を題しているような場合は、その求人原稿と辻褄が合うようにしましょう。
求人票には、
「残業はほとんどありません」とか「残業時間は月平均10時間です」としておきながら、
諸手当の欄に「みなし残業手当(30時間相当分)」とあると、求人を見た人は、
「毎月30時くらい残業があるのでは?」と思います。
実際に30時間程度毎月発生しているのであれば、「残業時間は月平均30時間」と書いたほうが良いですし、
実際は10時間程度しか発生していないけど、以前からの流れでそのまま「みなし残業手当(30時間相当分)」を支給しているような場合は、
みなし残業手当の見直しを行ってみてはいかがでしょうか?
例えば、基本給に上乗せしたり、別の手当として支給するなどして、給与の総額は変わらないように見直す方法です。
ただ、企業側の経営上困難で減額したい、または無くしたいといた場合は、不利益変更になります。
不利益変更は、企業側の一方的な不利益変更は認められません。
不利益の程度、不利益変更をする必要性や、従業員に丁寧説明し従業員の自由意思に基づく合意といったものが必要になり、慎重に進める必要があります。
顧問社労士いる場合は顧問社労士に、いない場合は労働基準監督署等に事前に相談しながら行いましょう。