未払い賃金請求権の消滅時効期間が2年から3年に延長 ― 未払い賃金のトラブルを防ぐ労働時間管理のポイント

今回は労働基準法の改正により賃金請求権の消滅時効期間が3年に延長されたことについて、人事労務担当者の皆さんに向けて、労働時間管理のポイントについて解説します。未払い賃金請求権に関わるリスクを軽減し、労働環境を改善するために、以下のポイントに留意してください。

 

労働時間管理の運用について

まずは、労働時間の管理と運用について解説します。

出勤・退勤の正確な記録

従業員の出勤・退勤時間を正確に記録することは、労働時間管理の基本です。タイムレコーダーやクラウドシステム等の勤怠管理システムを活用して、従業員の労働時間を適正に管理しましょう。また、勤怠記録の出勤簿は保存期間が5年となっています。適切に管理し、必要な場合に備えて長期保存できるようにしてください。

休憩時間の遵守

労働基準法では、労働時間には適切な休憩時間を与えるなければなりません。
労働基準法第34条で、労働時間が 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分 8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定めています。従業員が労働時間中に適切な休憩を取れるよう、休憩時間の遵守を徹底しましょう。特に長時間労働や残業が発生しやすい業種では、休憩時間の守られ方を重視し、従業員に適切な休息を確保することが重要です。

時間外労働時間の管理と残業代の適正支払い

労働時間を管理する上で重要なポイントは、業務命令の適正化です。従業員の健康と労働生産性のバランスを考慮し、業務量やスケジュールを適切に調整しましょう。それには、労働者が適切な時間内に業務を遂行できるよう、業務の見直しや効率化の取り組みを行うことが重要です。

また、労働時間外の残業には、適切な残業代の支払いが求められます。未払い賃金請求権の時効期間が延長されたことで、適正な残業代の支払いがより重要になりました。残業の申請手続きや残業時間の確認等の運用をしっかりと整備し、運用方法は社内に浸透させ、適正に運用することが重要です。
その上で、残業代の計算方法などを明確化し、従業員に対して適切な残業代を支払うことを忘れないようにしましょう。
残業代の計算は、1分単位となっています。
なお、割増賃金計算の端数処理に当たって次の方法は、常に労働者の不利となるものでなく、事務簡便を目的としたものとして次の運用は認められています。

1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。 1時間当たりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。

 

労働時間管理の教育と意識向上

労働時間管理に関する教育や研修を実施し、従業員の意識向上を図ることが重要です。労働基準法の遵守や適正な労働時間の確保について従業員に正確な情報を提供し、問題や疑問が生じた場合には適切なサポートを行いましょう。従業員が自身の権利や労働条件について理解し、適正な労働環境を求める意識を高めることで、未払い賃金請求権のリスクを最小限に抑えることができます。

法的アドバイスとリスク管理の重要性

未払い賃金請求権に関わる法的リスクを軽減するために、必要な場合は法的アドバイスを活用しましょう。社会保険労務士や労働法の専門家からのアドバイスを受けることで、労働時間管理や未払い賃金請求権の問題に対して適切な対策を講じることができます。また、リスク管理の観点から、労働時間管理や賃金支払いに関するルールやプロセスの見直しを定期的に行い、問題の予防と解決に努めましょう。

まとめ

  1. 出勤・退勤の正確な記録を行い、勤怠管理システムの活用を検討しましょう。
  2. 適切な休憩時間を確保し、労働基準法に準拠した休憩ルールを徹底しましょう。
  3. 労働時間の管理と残業代の適正支払いを行い、労働時間外の適切な賃金を支払いましょう。
  4. 業務命令の適正化を図り、労働者の過重な労働負担を防止しましょう。
  5. 労働時間管理に関する教育や研修を行い、従業員の意識向上を図りましょう。
  6. 法的アドバイスを受け、リスク管理を行い、労働時間管理のルールやプロセスを見直しましょう。

これらのポイントを遵守することにより、従業員の権利保護や労働環境の改善に努めることができます。また、未払い賃金請求権に関わるリスクを最小限に抑えることで、企業の信頼性向上や法的トラブルの回避にもつながります。

最後に、労働時間管理は絶えず見直しと改善を行うべき領域です。労働基準法の変更や労働環境の変化に合わせて、柔軟に対応することが求められます。人事労務担当者として、法令遵守と従業員の権益保護に積極的に取り組み、労働時間管理の質の向上に努めましょう。