従業員を雇ったらやること~労働保険編~

従業員を雇ったらいろいろな手続きが必要になります。

大きく分けて、労働保険と社会保険があります。

労働保険とは、「労働者災害補償保険」(一般的には労災保険と言っていますね。)と「雇用保険」を合わせて労働保険保険と言います。

今回は、労働保険について解説します。

 

労災保険の解説

まず、労災保険について解説します。

一人でも雇ったら、労災保険に加入します。正社員とかパートとかアルバイトとかに関係なく必要です。

労災保険は、どんなものかというと、

業務中に業務に起因したケガや病気、または、通勤途中のケガなどに対し、労災保険から必要な保険給付が行われます。

この労災保険の保険料は全額事業主の負担です。

従業員の負担はありません。なぜでしょうか?

もともと、会社は、従業員が業務上のケガや病気等をした場合は、労働基準法の規定に従い、従業員に所定の補償をしなければなりません。

しかし、それが高額になった場合は、会社も負担しきれない場合があります。それを、この労災保険より補償をしてもらおうというものです。

ですから、この労災保険というのは、給付は従業員に対して行われるものですが、会社が負担すべきものを国が変わって保証してくれるわけですから、会社の保険というわけです。

ですから、保険料もすべて会社が負担することになります。

(社会保険と雇用保険は、従業員負担がありますね。)

労災保険料の保険料はいくら?

労災保険料はいくら払う?

労災保険料は事業の種類で保険料率が決まっています。

例えば、建設事業で道路新設事業は1000分の11です。

交通運輸業は1000分の4です。

通信業、放送業、新聞業または出版業は、1000分の2.5です。

つまり、ケガなどが起こりやすい事業ほど、料率は高いってわけです。

<加入時>

保険関係が成立した日、つまり従業員を雇った日の翌日から50日以内に保険料を支払います。

<加入の翌年以降>

前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付←「確定保険料の申告」って言います。

新年度の概算保険料を納付するための申告・納付←これを「概算保険料の申告」って言います。

これらの手続きが必要となります。これが「年度更新」といって毎年行う手続きです。

毎年、6月1日~7月10日までに、申告と納付をします。

5月くらいに緑色の封筒がお住まいの地域の労働局から届きます。

※この時に、あとで解説する雇用保険料も一緒に納付します。

手続きの流れ

提出する書類は、以下の2つです。

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料申告書

提出の詳しい手順は、厚生労働省のホームページで確認できます。

引用:厚生労働省ホームページ 労働保険の成立手続き

手続きは、一元適用事業と二元適用事業とで少し違います。

一元適用事業

労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付等を両保険一本として行う事業です。

二元適用事業

その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を区別する必要があるため、保険料の申告・納付等をそれぞれ別個に二元的に行う事業です。
一般に、農林漁業・建設業等が二元適用事業で、それ以外の事業が一元適用事業となります。

引用:厚生労働省ホームページ 労働保険関係の成立手続

農林漁業、建設業等以外の事業は一般的には一元適用事業となります。

雇用保険の解説

労災保険は、正社員、パート、アルバイトなぢ従業員の働き方に関係なく、一人でも雇ったら加入する、と説明しました。

この雇用保険は少し違います。

加入の要件、というのがあって、要件を満たせば加入の手続きが必要です。

ですから、従業員の誰も要件を満たさないなら、加入しなくてもOKです。

雇用保険の加入要件と手続き

加入できる要件は次のようになっています。

適用基準及び加入手続
次の (1) 及び (2) のいずれにも該当するときは、雇用保険の被保険者となりますので、事業主は必ず「雇用保険被保険者資格取得届」(以下「資格取得届」といいます。)を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に、被保険者となった日の属する月の翌月 10 日までに提出してください。
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
期間の定めがなく雇用される場合
雇用期間が31日以上である場合
雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]
(2)1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。

引用:厚生労働省ホームページより

わかりやすく言いますと、

31日以上の雇用見込みがあって、

週の労働時間が20時間以上の労働者に対し、雇用保険に加入する義務があります。

雇用保険に加入する義務がある人を雇ったら、雇った日の翌日から10日以内にハローワークで手続きを行います。

手続きに必要なものは、

①「事業所設置届」

②「雇用保険被保険者資格取得届」

③「労働保険関係成立届」※労災保険の手続きをした時の事業主控えです。

④雇用保険に加入する人の「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」など

⑤登記事項証明書、事業許可証、賃貸借契約書など

④⑤については、手続きの前に、一度はハローワークに確認されることをお勧めします。

例えば、登記事項証明書、事業許可証、賃貸借契約書が準備できない場合でも、他のもので代替できる場合があります。

また、提出期限は雇った日の翌日から10日以内です。

期限を過ぎると使いの書類を求められる場合がありますので期限内に提出するようにしましょう。

雇用保険料の計算

この雇用保険料は、毎年決定されます。前年度と変わらない時もあれば、アップされるときもあります。

雇用保険料率は、

一般の事業
農林水産・清酒製造の事業
建設の事業
の3つの業種によって異なります。

令和3年分の労働者負担分の料率は

一般の事業:1000分の3
農林水産・清酒製造の事業:1000分の4
建設の事業:1000分の4

でした。

その月の給与の総支給額に、「労働者負担」の雇用保険料率を掛けて雇用保険料を計算して、お給与から控除します。

この、従業員から控除した保険料と、企業が負担する保険料は、労災保険の解説で書いたように、年度更新の時に一緒に納付します。

※雇用保険料率は毎年3月くらいに厚生労働省から公表されますので、チェックしておきましょう。

まとめ

創業時は、やることがたくさんあって、労務関係の手続きを忘れがちです。

特に、労災保険については、労災保険についての保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が起きて、労災保険給付を行った場合は、遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)をされたり、労災保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収されることがあります。

忘れずに手続きをしましょう。

 

 

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