今起こっているメジャーリーグの労使紛争はいったい何?
今、アメリカのメジャーリーグで起こっている、労使紛争をご存じですか?
メジャーリーグにはチーム年俸に上限が設けられています。
その理由は、どれだけでも年俸を出していいとなると、お金があるチームが有力選手を獲得し、各チームの戦力に差が出来てしまうからです。
この、上限額を超過したチームは課徴金を支払っていて、この課徴金のことを「ぜいたく税」と言ったりします。
このチーム上限の基準額を上げてほしい!と言っている選手会側と、経費抑制の基準額を下げたい!と言っている経営側と揉めているわけです。
上限、つまり年俸の総額が決まっていれば、その金額の枠の中で、選手みんなの年俸を振り分けていくわけですから、年俸がとてつもなく高い選手を獲得すれば、必然的に年俸が抑えられてしまう選手が出てくるわけです。
だから、上げてくれーっていう選手の気持ちもわかりますね。
賃金はどうしたら増やせるのか?
これは、日本における春闘と似ていますよね。
労働組合側は、ベースアップを主張し、企業側はできるだけそれを抑えようとする。
ですから、賃金については、労使の利害は常に相反するわけです。
でも、こんな論争にしていても不毛なわけで、労使ともに納得できるいい落としどころを見つけいたいものです。
そこで、両方の思惑が両立する方法を見つけた偉い人がいます。
それは、アレン・W・ラッカーという人が考え出した「ラッカープラン」というものです。
アメリカの工業統計を3年もかけて調べてこんなすごいことを見つけてしまったのです。それは…
「賃金総額と付加価値との間に高い相関関係がある」ということを発見したのです。
付加価値とは、「付加価値=売上高-外部購入価額」 (控除法(中小企業庁方式))のこと。
この付加価値を一定の割合で労使に分配するということです。
この分配で人件費にあたる部分が「労働分配率」ですね。
付加価値を一定割合で分配するわけですから、付加価値が増えれば増えるほど、従業員の人件費も増えますね。
ですから、働く側もこの付加価値を増やすように頑張れば、自分がもらえる賃金も増えてくるというわけです。
そうなると、自分の賃金が増えるように一生懸命頑張って働くわけです。
人事制度の賃金設計でモチベーションは変わる
付加価値を労働分配率で人件費に配分するまでは決まったとして、ではそれを実際に従業員一人一人にどのように分配していくのかを
決めないといけませんね。
これが人事制度の等級制度であり、賃金制度です。
等級制度で何を基準に社内の序列(ランク)を決めていきます。
年功なのか、能力なのか、はたまた成果なのか?
その基準が決まれば、基準に合った賃金テーブルを作るわけですね。
つまり何を頑張れば賃金は上がっていくのかを従業員へ示すことになります。
でも、ここで年功だけで賃金が上がる仕組みだと、頑張って働かなくても年数が経てば必然的に賃金は上がっていくので、そんなに働かなくてもよさそうですよね。
また、スキルアップしようがしまいがもあまり関係なさそうです。
企業の業績もそれでは上向かないでしょうし、何より原資となる付加価値が増えないと元手がないわけですから、賃金も上げることが出来ません。
人事制度を作るとき、この等級の基準や賃金テーブルをどのように設計するかで従業員のモチベーションは変わってきます。
どうすれば、付加価値を上げることが出来るのか、その付加価値を上げるためには働く上での処遇の基本となる基準をどう定めるのか、その基準はどんな目的のために定まるのかを決定することが大切になってきます。
賃金が上がればやっぱり人って嬉しいものです。
もちろんお金だけで幸せになれる、ってわけではありません。でも、なければこれまた困ります。
従業員の経済の安定は経営者の責務です。従業員がやりがいをもって働き、付加価値を増大できる人事制度は企業にとってはとっても重要ですね。
さて、メジャーリーグの労使紛争はどのように決着するのでしょうか。
今年もちゃんと大谷選手をはじめとする日本人選手の活躍を見たいものですね。