「人手不足に悩んでいる」「女性社員が定着しない」「誰かが休むと業務が回らない」
そんなお悩みを抱えている企業様は多いのではないでしょうか。
今回は、中小企業庁のメールマガジン『中小企業ネットマガジン(3/26号)』の巻頭コラム「~『多能工化』で女性が働きやすい職場づくり~」を引用し、愛知県のある中小企業が取り組んだ実例をもとに、これからの「働きやすい職場づくり」のヒントを探っていきます。
「多能工化」とは?
多能工化とは、従業員に一つの業務だけでなく、複数の工程や業務を担えるよう育成することをいいます。
この考え方は、かの有名な「トヨタ生産方式」を支えた元副社長・大野耐一氏によって考案されたもので、元々は製造現場の効率化を目的として始まりました。
しかし今、この「多能工化」が、人手不足や働き方改革といった課題を抱える中小企業にとって、重要な経営戦略のひとつとして見直されています。
有休取得率80%!“多能工化”が支える柔軟な職場
愛知県安城市の自動車部品メーカー「エーピーシィ」では、従業員の約8割が女性。
この企業では、2017年から多能工化に本格的に取り組み、働きやすさと生産性の両立を目指してきました。
たとえば、家庭の事情で有休を取得する社員がいても、別の社員がカバーできる体制を整備。そのために、社内教育やスキルアップの機会を積極的に用意し、さらに「多能工に対応できる人材を高く評価する」という制度も導入しました。
結果として、10~15の工程をこなせる社員が当たり前のように育ち、全国平均65%の有休取得率に対して、エーピーシィでは80%超を記録しています。
信頼関係が、組織を強くする
同社の安藤社長が語る「人手不足を乗り越える秘訣」は非常にシンプルです。それは、「顧客と同じように、従業員との信頼関係を大切にすること」。
従業員への定期的なアンケートや個別面談を通じて声を丁寧に拾い、できる限り経営に反映させる。そして、「自分たちが上ではなく、働いてくれている社員の方が上」という考えを大切にしているといいます。
私自身、社労士として多くの現場に関わる中で、「従業員との信頼関係がすべての基盤になる」と実感しています。制度や仕組みだけでは、組織は動きません。社員との信頼があるからこそ、柔軟な制度が機能し、人が育ち、組織が強くなるのだと思います。
中小企業にとっての「多能工化」の価値
「多能工化」と聞くと、「教育に時間がかかるのでは?」「誰かに負担が集中しないか?」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、属人化のリスクを減らし、誰かが休んでも業務が滞らない職場をつくることは、結果として業務効率の向上や従業員の安心感につながります。
また、採用活動においても「休みやすい」「柔軟に働ける」という環境は、大きなアピールポイントになります。今後さらに、家庭や育児・介護と両立しながら働く人材が増える中で、こうした仕組みづくりは不可欠となるでしょう。
※出典:本記事は、中小企業庁から配信されているメールマガジン『e-中小企業ネットマガジン(3/26号)巻頭コラム「~『多能工化』で女性が働きやすい職場づくり~」を引用し作成しています。