部下の意欲を継続させるマネジメントとは?
部下が長く会社に定着し、仕事に前向きに取り組むためには、彼らの「意欲を継続させる」ことが不可欠です。入社直後はモチベーションが高かった社員が、やる気を失い、最終的には離職してしまうケースを防ぐためには、適切なマネジメントが必要です。
本記事では、社員の「意欲を継続させる」ための基本的な考え方をお伝えします。
適切な目標設定が意欲を支える
部下の意欲を維持するためには、「適切な目標を設定する」ことが重要です。ここでのポイントは、「目標の難易度」が部下に与える影響です。
難易度のバランスが意欲を左右する
目標の難易度が高すぎると、部下は達成不可能だと感じて挫折してしまいます。一方、簡単すぎる目標では、挑戦する意義を感じられず、成長の機会を逃してしまいます。そのため、意欲を維持するには、次の2つを満たすバランスが必要です。
- 「努力すれば達成可能」と思える適度な難易度
- 挑戦する意義が感じられる難易度
たとえば、営業チームのメンバーに新規案件獲得の目標を設定する場合、ベテラン社員には高めの数値目標を与え、能力に自信のないメンバーには達成しやすい具体的な行動目標(例:一週間で○件の顧客訪問をする)を提示するのが効果的です。
難易度の感じ方は個人で異なる
一律の目標設定はNG
社員一人ひとりの経験やスキル、性格は異なるため、目標の難易度を全員に一律で決めることは避けなければなりません。同じ目標でも、ある社員にとっては「挑戦的でやりがいがある」と感じられても、別の社員にとっては「簡単すぎる」または「達成不可能」と感じられる場合があります。
部下に合わせたカスタマイズの必要性
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
- 新人社員の場合:業務に不慣れな段階では、行動ベースの目標を設定する。例:「1週間で5件の顧客訪問を実施する」や「毎日、上司に進捗報告を行う」。
- 中堅・ベテラン社員の場合:より具体的な成果目標を設定する。例:「月間で○件の新規案件を成約する」や「チーム全体の成果を10%向上させる」。
このように、社員の経験やスキルに応じた目標設定が、意欲を継続させるカギとなります。
目標は「与えっぱなし」にしない
観察と再設定を怠らない
目標を一度設定したら終わりではありません。部下のパフォーマンスや成長に合わせて、目標を再設定することが必要です。たとえば、次のような場面で再設定を検討すべきです。
- 目標が簡単すぎると感じたとき:部下が目標を簡単に達成し、次のチャレンジを欲している場合。
- 目標が難しすぎると感じたとき:部下が明らかに達成に苦労しており、挫折しそうな場合。
チーム目標を活用する
個人目標が調整しにくい場合は、チーム全体の目標を設定する方法も効果的です。たとえば、ある社員に個別目標を与えたうえで、チーム全体で「月間売上○○万円達成」などの共通目標を追加すると、個人の意欲とチームの一体感を同時に高めることができます。
【具体例】適切な目標設定で部下の成長をサポートした事例
ケース1:新人社員Aさんの成長
新入社員のAさんは、入社時には高い意欲を持っていましたが、日々の業務に追われるうちにモチベーションが低下している様子でした。そこで、上司はAさんの業務スキルを分析し、次のような行動目標を設定しました。
- 1週間で10件の顧客リストを作成する
- 1週間に3件の顧客訪問を実施する
これにより、Aさんは具体的な行動指針を得て、少しずつ達成感を積み重ねることができ、最終的にはより高い成果目標に挑戦できるようになりました。
ケース2:ベテラン社員Bさんの挑戦
ベテラン社員Bさんは、過去の実績に安心し、現状維持に陥っている様子でした。そこで、上司はより挑戦的な目標を設定しました。
- 新規案件の成約数を月間20件に引き上げる
- 新人メンバーへの指導を通じてチーム全体の成績を10%向上させる
この結果、Bさんは新しい責任感を持ち、個人としてもチームとしても成果を上げることができました。
自主性に任せすぎないマネジメント
目標を設定した後、部下に完全に自主性を任せきるのは避けるべきです。「必要なときに相談してくるだろう」というスタンスでは、意欲低下を見逃してしまうことがあります。一方で、細かく指示を出しすぎると、部下が単なる作業者になりかねません。
「二つのR」を意識する
- Reason(目的)を明確に伝える:目標の意義や業務の背景をしっかり説明し、部下が納得して仕事に取り組めるようにします。
- Range(自由の範囲)を示す:仕事の自由度を明確にし、「この範囲内であれば自由に判断して良い」と伝えます。
これにより、部下は適切な指針を持ちながら、自主性を発揮することができます。
まとめ:部下の意欲を継続させるマネジメントのポイント
部下の意欲を継続させるためには、「適切な目標設定」と「柔軟なフォローアップ」が欠かせません。特に、以下のポイントを押さえることで、部下のモチベーションを維持し、成長を促進することができます。
- 目標設定は個別にカスタマイズ
一律の目標ではなく、部下の能力や経験に応じて「ちょうど良い難易度」の目標を設定することが大切です。 - 目標は定期的に見直す
一度設定した目標を与えっぱなしにせず、部下の様子を観察しながら再設定する柔軟さが求められます。 - 自主性と管理のバランスを取る
自由に取り組ませる部分と、上司として適切に関与する部分のバランスを意識しましょう。「仕事の目的(Reason)」と「自由の範囲(Range)」を明確に伝えることで、部下は安心して取り組めます。
部下のモチベーションは、上司のマネジメント次第で大きく変わります。適切な目標を設定し、それを通じて成長をサポートすることで、部下の意欲を持続させる職場環境を作り上げていきましょう。日々の小さな観察や声掛けが、大きな成果につながるはずです。