以前のブログで『経営者なら知っておきたい、よくわかる就業規則の解説』で就業規則に記載しなければいけない内容について解説をしました。これからの時代に必要な就業規則のあり方について少し書きましたが、今回のブログではもう少し深堀して解説します。
就業規則の法律的な役割
前回の復習を少し。
就業規則に記載することは大きくこの3つです。
絶対的必要記載事項・・・絶対記載しないといけないこと。 相対的必要記載事項・・・定めるんだったら記載しないといけないこと。 任意的記載事項・・・会社が自由に記載すること |
今回は、この「任意的記載事項」についての解説です。
従業員は大事なステークホルダー
ビジネスではよく「ステークホルダー」って言葉をしますよね。
ステークホルダーとは、「利害関係者」の意味で、会社経営ではその対象は株主、経営者、顧客、取引先も含まれ、非常に広範囲に及びます。
例えば、
株主には、会社の利益を上げて企業価値を上げ、株主への配当を上げるよう経営努力をする
取引先にはとの信頼関係を大事にする
企業の経営理念をステークホルダーへ向けて発信する
ステークホルダー重視の企業経営を目指す
みたないことを社内で声高らかに言っていたり、ホームページに書いてあったりしますね。
そのステークホルダーの中に、あなたの会社は「従業員」も含んでいますか?
実は、このステークホルダーには「従業員」も含みます。
あなたは、従業員がステークホルダーだという認識はありましたか?
株主や、顧客、取引先と同じような思いで大切に考えているでしょうか?
先ほど挙げた例の中にある「ステークホルダー重視の企業経営」であれば、従業員も同じように重視しているでしょうか?
社員は天使か?悪魔か?
就業規則には、ほとんどの会社が「懲戒」に関する規定をしています。
「懲戒」は相対的必要記載事項です。
ですから、定めをするんだったら記載しなければならない事項です。
ですから、懲戒をうちはしない!そんなことが必要になるような社員はいない!っていうことであれば、無くてもいいわけです。
まあ、それはとっても理想的な職場ですが、でもやっぱり未来は不確定なので規定しますよね。
ただ、ここで考えて欲しいのです。
「懲戒事由」に細かく、あれしたら懲戒、これしたら懲戒と書くと、従業員は勤務態度が良くなって、勤務成績も上がるのでしょうか?会社への貢献度も上がるのでしょうか?
懲戒事由に書いていないことが勤務不良のことが発生した、就業規則の「懲戒事由」をみると該当する規定がない、だから懲戒事由に追加しておこう、
また別の勤務不良のことが発生した、就業規則の「懲戒事由」をみると該当する規定がない、だから懲戒事由に追加しておこう…。
これでは、永遠に「懲戒事由」は増え続けます。
「懲戒事由」に規定すれば、勤務不良は無くなるのでしょうか?
従業員は、自分の態度を改めて会社の為、会社の顧客の為に貢献するようになるのでしょうか?
あなたが思うように仕事をしてくれて成果を上げてくれるのでしょうか?
私は、そうは思いません。
懲戒事由に該当するような素行が悪かったり、無断欠勤が多かったりするのは、何かしらの原因があるのです。
会社経営者が顧客ばかり見て従業員にむりをさせていて、それへの反抗心だったり、上司が全然話しを聞いてくれないから反発する、プライベートで何か心配事があるからやる気がない、など。
起こったことに対する対処療法的に就業規則で縛っても、根本的な問題は解決しません、
その原因をちゃんと分析し、従業員の話しの話しをしっかり聞いて、問題の解決をする必要があります。
その方が、ずっといい方向に向かうはずです。
解決方法が、
始業終業の時刻を従業員に決めてもらうフレックスタイム制の導入かもしれないし、
リフレッシュ休暇を導入
副業・兼業をしやすくするルール作り
かもしれません。
決めたら、就業規則に規定します。
従業員はあなたや会社の敵ではありません。大事なステークホルダーです。
顧客と同じように真剣にその従業員のことを考えて、その従業員が楽しく働ける環境を作ってあげましょう。
今年も育児介護休業法の改正や、パワーハラスメント防止対策の中小企業義務化など、毎年色んな改正が行われています。
この中には、「義務」のものと「努力義務」というものがあります。
文字通り、「努力義務」は必ずしも企業で取り組まなくても法律的には問題ありません。
パワーハラスメント防止対策についても、中小企業は令和4年3月31日までは努力義務です。
でも、一般社団法人日本経済団体連合会の「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」によると、パワーハラスメントの相談件数が増えたと回答した企業は44%でした。(アンケートは経団連会員企業を対象に実施され、回答企業数は400社となっています。)
つまり、こういったことが労使トラブルに発展したり、退職に繋がったりするわけです。
義務化になったから会社が行うべき取り組みを実施する、というのではなく、その目的やなぜそういったことが努力義務になっているのかといった社会の背景を理解することが大切です。
また、育児介護休業法の中には、「子の看護休暇」というものがあります。
「子の看護休暇」
対象者:小学校就学前の子を養育する労働者 取得目的:病気やけがをした子の世話の他、予防接種や健康診断の受診 取得日数:子ども一人につき1年度に5日(小学校就学前の子が2人以上の場合は10日) |
となっています。
ただ、法律では「子の看護休暇」を取得した場合「無給」でいいとなっています。
ですから、「無給」としていく企業が多く、あまり取得されていないのが現状です。
この「無給」を、年次有給休暇と同じように「有給」にすれば、おそらく取得率は高まるでしょう。
でも、会社側からすると、休みが増えるうえに給料も支払うとなると、結構な金銭的な負担だな、
子がいない人の不満にならないだろうか
といった懸念が出てくるでしょう。
ですが、ここで考えて下さい。
これから人手不足による人材争奪戦が始まり、時給も高騰してくるとみられている中で、採用にかかるコストや人手不足にの問題と比較した時に、「子の看護休暇」の負担を必要経費と考えてもいいのではないでしょうか?
他の会社は「無給」なのにうちの会社は「有給」となると、ママ友の間であっという間にあなたの会社の良い評判が広まって、副次的な効果であなたの会社で働きたい!って思う人が増えることもありますよね。
他がやっていないから→やらない
ではなく
他がやっていないから→やるんです。
だから価値があるし、他社との差別化が出来るのではないでしょうか?
「子の看護休暇」を有給にする場合は、就業規則にもちゃんと規定して、それを従業員にちゃんと伝えましょう。
うちの会社って、社員を大事にしてくれるなあ、って思ってくれるはずです。
まとめ
「就業規則」っていうネーミングが。ちょっとそこで働く社員を規則で縛る満たない連想をしがちなのも否めません。
就業規則って、
第1条(目的)
この就業規則(以下、「規則」という。)は 株式会社○○(以下、「会社」という。)に勤務する従業員の服務規律、労働条件その他の就業に関する事項を定めたものである。 |
から始まるものが多いですよね。
そうではなく、あなたが描く会社のミッションやビジョンを書いてもいいでしょうし、あなたが思う従業員への思いなどを書いてもいいでしょう。
また、「~である。」という言い回しを「~します。」といった言い回しに変えるだけでも堅苦しい印象が払しょくされますね。
当然、労働基準法で定められている「絶対的必要記載事項」については、しっかる法に則っての記載が必要ですが、
「相対的必要記載事項」「任意的記載事項」については、
あなたの会社の良さを出すチャンスです!
他社との差別化をするチャンスです!
就業規則への固定観念を捨て、新たな形の就業規則を作ってみませんか?
「働くって楽しい!」って皆が思える職場作りとしての役割にしてみませんか。
またとない、素晴らしい就業規則になりますよ。きっと。