働きやすさだけでは不十分?エンゲージメントを高める「働きがい」の重要性
「最近の社員は、以前ほど仕事への熱意がない」
そんな声を聞くことがあります。
もちろん、これをひとことで「最近の社員はやる気がない」で片づけるのは乱暴です。
でも、日本の社員に「熱意」が低いのは、感覚だけの話ではなさそうです。
米Gallup社の2022年調査(2023年発表)では、熱意がある社員、仕事にエンゲージしている社員の比率が世界平均23%に対して日本はわずか5%で、145カ国中イタリアと並んで最下位だったとされています。
こうした数字を見ると、考えたくなります。
なぜ、日本では熱意を持って働く人が少ないのか。
そして、どうすれば社員が前向きに働ける職場になるのか。
そのヒントは、「働きやすさ」と「働きがい」を分けて考えることにあります。
働きやすさは大事。でも、それだけでは人は動かない
働きやすい会社は、たしかに居心地がよく、社員はあまり辞めないかもしれません。
でも、辞めにくいことと、熱意を持って働けることは同じではありません。
近年、多くの企業で働き方改革の推進もあり、働きやすさを整える取り組みが進んでいます。
残業を減らす。
有給を取りやすくする。
ハラスメント対策を進める。
育児や介護と両立しやすい制度を整える。
こうした取り組みは、もちろん大切です。
安心して働ける環境がなければ、長く続きません。
ただ、働きやすさはあくまで土台です。
たとえるなら、働きやすさは、きれいに整備された道路のようなものです。
道がガタガタなら安心して走れません。
でも、道路が整っただけで、「この道を走りたい!」と思えるとは限りません。
会社も同じです。
働きやすさは、不満や不安を減らしてくれます。
けれど、熱意まで自然に増やしてくれるわけではないのです。
「辞めにくい会社」と「力を発揮したくなる会社」は同じではない
働きやすい会社は、たしかに辞めにくくなります。
不満が減るからです。
でも、辞めにくいことと、前向きに力を発揮したくなることは同じではありません。
たとえば、こんな状態はないでしょうか。
- 仕事の意味が見えない。
- 何のためにやっているのか、いまひとつ腹落ちしない。
- 頑張っても、あまり見てもらえている感じがしない。
- 成長している実感がない。
- 意見を出しても、反応が薄い。
- 毎日が“こなす仕事”になっている。
こうなると、職場に強い不満があるわけではなくても、心のエンジンはかかりにくくなります。
言い換えれば、
ブレーキは外れた。でも、アクセルが踏まれていない。
そんな状態です。
働きやすさは、ブレーキを外す力にはなります。
でも、アクセルを踏ませるのは、別の要素です。
それが、働きがいです。
働きがいは、仕事に意味と手応えを与える
働きがいというと、少しかたい言葉に聞こえるかもしれません。
でも、実際はもっと身近なものです。
たとえば、
- この仕事は誰かの役に立っている
- 自分はここで必要とされている
- 前より少し成長できた
- 任せてもらえている
- 頑張りを見てもらえている
こうした感覚があると、人は仕事を“ただの作業”ではなく、“意味のある役割”として受け止めやすくなります。
働きがいのない仕事は、白黒の景色のようなものです。
間違ってはいない。
困ってもいない。
でも、どこか味気ない。
そこに意味や承認、成長実感が加わると、仕事に少しずつ色がついてきます。
熱意は、そういうところから生まれてくるのだと思います。
エンゲージメントが高い職場は、空気が違う
ここで出てくるのが、エンゲージメントという言葉です。
エンゲージメントとは、会社や仕事に対する愛着や熱意、貢献したい気持ちのことです。
単に満足している、というだけではなく、
「この会社で力を発揮したい」
「この仕事をもっとよくしたい」
と思える状態に近いものです。
エンゲージメントが高い職場は、目に見えないけれど空気が違います。
誰かに言われるまで待つのではなく、「こうしたほうがいいのでは」と声が出る。
面倒ごとを押し付け合うより、どう進めるかを考える。
お客様への対応にも、もうひと手間が出る。
派手ではなくても、組織がちゃんと呼吸している感じがあります。
働きがいを高めるために、企業が意識したいこと
では、働きがいはどうすれば生まれるのでしょうか。
特別な制度よりも、日々の職場づくりの中にヒントがあります。
1.役割や期待が見えていること
自分が何を期待されているのかが曖昧だと、人は力を出しにくくなります。
どこに向かって頑張ればよいのかが見えるだけでも、仕事への向き合い方は変わります。
2.対話があること
ここでいう対話は、単なる業務連絡ではありません。
仕事の意味、悩み、強み、期待、成長について話せることです。
言葉を交わすことで、自分の役割や価値を実感しやすくなります。
3.強みが活きること
足りないところを埋める話ばかりでは、仕事はだんだん苦しくなります。
人は、自分の持ち味が活きる場面があるときに、前向きになりやすいものです。
4.頑張りが見えていること
拍手のないステージで踊り続けるのは、しんどいものです。
結果だけでなく、工夫や挑戦、成長にも光が当たると、仕事の景色は変わります。
5.仕事の意味が伝わっていること
自分の仕事が誰の役に立ち、会社の中でどんな意味を持っているのか。
ここが見えると、作業は役割に変わります。
経営者ができることは、「やる気を出させる」ことではなく、前向きに働ける職場をつくること
社員の熱意を高めたい。
そう思ったとき、つい「もっと主体性を」「もっと当事者意識を」と言いたくなることがあります。
でも、熱意は号令で生まれるものではありません。
先に必要なのは、安心して働ける環境を整えること。
そして、そのうえで、意味を感じられる仕事、認められる関わり、成長を実感できる機会をつくることです。
働きやすさは、熱意を失いにくくする土台です。
働きがいは、熱意を育てる火種です。
この両方がそろって、はじめてエンゲージメントの高い職場に近づいていきます。
まとめ
冒頭で触れたように、日本では「熱意ある社員」の割合が国際的に見ても低い水準にあることが紹介されています。
この数字を見て、「日本人はやる気がない」で終わらせてしまうのは、少しもったいないと思います。
問いたいのは、
なぜ熱意が育ちにくいのか。
そして、
どうすれば熱意を持って仕事ができる職場になるのか。
その答えは、働きやすさを整えることだけではなく、働きがいを育てることにもあるはずです。
不満を減らすだけでは、熱意は増えない。
でも、意味が見え、認められ、成長を感じられる職場では、人は少しずつ前を向きます。
だからこそ、これからの職場づくりで大切なのは、
「働きやすさ」を整えることと、
「働きがい」を育てること。
その両方がそろってこそ、社員のエンゲージメントは高まり、組織は前に進む力を持ち始めるのではないでしょうか。