就業規則、作ったままになっていませんか?|現場で活きるルールにするための3つの視点
「就業規則なら、作ったものがあります」
何年か前に作ったけれど、正直、ほとんど開いていないな……
そう言って、事務所の棚やパソコンのフォルダから、しばらく開いていない就業規則を取り出す会社も少なくありません。
従業員が10人以上になったので作った。助成金の申請で必要になった。ひな型を参考に、とりあえず形を整えた――。
作ったきっかけは、会社によってさまざまです。
けれども、せっかく就業規則があっても、普段の職場で使われていなければ、少しもったいない気がします。
就業規則は、会社に置いておくための書類ではありません。本来は、会社と働く人との間で「この会社では、どのように働くのか」を共有するためのルールです。
今回は、就業規則を“作ったまま”にせず、現場で活きるものにするための3つの視点を考えてみます。
そもそも、就業規則は何のために作るの?
人が一人、二人のうちは、何かあっても社長がその場で判断し、直接伝えることができます。
ところが、従業員が増えてくると、そうはいきません。
「休みを取りたいときは、誰に伝えればいいの?」
「遅刻した場合は、どのような扱いになるの?」
「この手当は、どのような人に支給されるの?」
「在宅勤務は、誰でも利用できるの?」
こうした疑問に、その都度違う回答をしていると、働く人は戸惑います。上司によって対応が違えば、「自分だけ不公平なのでは」と感じる人もいるでしょう。
就業規則には、こうした職場での判断基準をそろえる役割があります。
もちろん、労働条件を明らかにし、トラブルを防ぐことも大切です。ただ、それだけではありません。
会社が働く人に何を大切にしてほしいのか。どのような職場にしていきたいのか。その考え方を、日々の働き方に落とし込むのも就業規則の役割です。
就業規則は、会社を縛るものでも、従業員を取り締まるためのものでもありません。会社と働く人が安心して仕事をするための「共通のものさし」と考えると、少し見え方が変わってきます。
視点1 会社の実態と合っているか
現場で活きる就業規則にするために、まず確認したいのは、書かれている内容と実際の働き方が合っているかどうかです。
例えば、就業規則には「休暇の申請は書面で行う」と書かれているのに、実際には口頭やチャットで済ませている。規則に記載された始業時刻と、実際に働き始める時刻が違っている。このようなことは、意外とよくあります。
規則と実態が違っていると、いざ確認が必要になったときに、「就業規則にはそう書いてあるけれど、普段は違うよね」ということになってしまいます。
働き方や職場の状況は、少しずつ変わっていくものです。従業員が増えたり、新しい勤務形態を取り入れたりすれば、それまでのルールが合わなくなることもあります。
今の会社に合っているか、実際にそのとおり運用できているか。時々立ち止まって確かめることが大切です。
視点2 迷ったときの判断に使えるか
就業規則が役立つのは、問題が起きたときだけではありません。
むしろ、日々の仕事の中で「これはどうすればいいのだろう」と迷ったときにこそ、力を発揮します。
例えば、何度も遅刻を繰り返す従業員に、誰が、どの段階で、どのように注意するのか。休職の相談があったときに、どのような手順で対応するのか。有給休暇の申請を受けた管理職は、何を確認すればよいのか。
規則に書いてあるだけでなく、実際の対応の流れまで整理されていれば、管理職や担当者も判断しやすくなります。
逆に、規定はあっても具体的な運用が決まっていなければ、対応する人によって判断が変わってしまいます。
「何が書いてあるか」だけでなく、「現場でどう使うか」まで考える。これが、就業規則を機能させるポイントです。
視点3 働く人に伝わっているか
どれほど会社に合った就業規則を作っても、その存在や内容が従業員に伝わっていなければ、十分に活かすことはできません。
とはいえ、就業規則を最初から最後まで全員で読み合わせるのは、なかなか大変です。
入社時には、休暇の申請方法や服務上のルールなど、まず知っておいてほしいことを説明する。制度を変更したときには、変わった部分とその理由を伝える。管理職には、相談を受けたときの対応方法を共有する。
このように、必要なタイミングで必要な内容を伝える方法もあります。
また、就業規則は法律上必要な表現も多く、どうしても文章が堅くなりがちです。日常的によく使うルールについては、社内ルールブックや簡単な案内資料にまとめるのもよいでしょう。
大切なのは、就業規則があることではなく、会社のルールが働く人に理解され、日々の行動につながっていることです。
就業規則を、職場づくりのツールに
就業規則というと、「法律上必要だから作るもの」「問題が起きたときに会社を守るもの」というイメージが強いかもしれません。
もちろん、その役割もあります。
けれども、それだけにしておくのは、やはりもったいないと思います。
会社の実態に合っていること。迷ったときの判断に使えること。そして、働く人にきちんと伝わっていること。
この3つがそろうことで、就業規則は棚に置かれた書類から、日々の職場を整えるための道具に変わります。
まずは一度、自社の就業規則を開いてみてください。
「今もこのとおりに運用しているだろうか」
「現場で迷っていることの答えは書かれているだろうか」
「従業員は、このルールを知っているだろうか」
そんな視点で読み返してみると、これから整えていきたいことが見えてくるかもしれません。
これからどんな会社を目指すのか。そのために、どんな働き方が必要なのか。就業規則も、その方向に合ったものにしていけるといいですね。
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